●●で、アート作品をオークションで買える「ポスト資本主義オークション」
アート作品を、
オークションで買ったことはありますか?
多くの人はないかと思います。私もありません。
アート作品のオークションといえば、作品が大勢の人の前に出され、
どんどん値段が跳ね上がっていく様子が連想されます。
そこには、ギャラリーや美術館のスタッフ、企業の社長などの資産家など
ある程度選ばれた人が参加しています。
日本でも現代アートのオークションなどが行われているようです。
で、2月に開催されたのが、「ポスト資本主義オークション」
興味のある人ならだれでも参加OKで、
なおかつお金以外で入札できるというこの企画が一体……!?
ポスト資本主義オークション
・ポスト資本主義オークションとは?
・お金だけでない落札方法
・なんのために?
・当日の出品作品と、会場の様子
・所 感
・参考資料
ポスト資本主義オークションとは?
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「ポスト資本主義オークション」は、TPAMディレクション企画として開催されました。北京生まれのクリエイター、ジンイ・ワンさんがプロデューサーで、1回目がノルウェー行われ、2回目の公演が今回の企画です。
出品される7作品(注1)は、事前にカタログが公開されました。
さらに、会場の横浜市開港記念館では、2月14日(木)のオークション開催の2日前から内覧会(19:00-21:00)が開かれ、事前に作品を生で見ることもできました。
お金以外での落札方法
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このオークションの一番の特徴は、作品を、お金以外と交換できること。
それは、 機会・理解・交換。
例えば、
「機会」は、どこかのギャラリーでの個展を開く機会を提供する、
「理解」は、その人なりに作品の批評をする、
「交換」は、自分の持っているものと交換するといったことのようです。
これは、やってみないとピンとこないですよね(^^;
入札方法は、スマートフォンかタブレットで、
指定の入札サイトへアクセスし、作品と何を交換するか入力し行います。
入札は先着10名までで、
アーティスト本人が、そこから選ぶか、断るか選びます。
作品が一人歩きしている一般的なオークションとは異なるところですよね。
さらに、報酬は満額アーティストに渡されるのも特徴的。
(ただ、来場者は入場料を払っています、なぜか999円……)
なんのために?
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この企画は、発案者でディレクターのジンイ・ワンさんが、学生の頃に以下のような「アート作品が最終的に、作品を理解している人ではなく、金持ちのものになるのはなぜか?」という疑問を持ったことに端を発しているそうです。
ただ単純にアート作品を売りたいということではなく、
アート作品をお金以外で落札する過程で、
いろんな価値観の人々が、その作品の価値について対話するきっかけになるんですよね。
このオークションは長期的に様々な国で行っていく予定のようです。
国ごとの違いなどを見ることで、その国の価値観がわかるのかも(?!)
当日の出品作品と、会場の様子
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では、当日出品された作品と、
落札した人・条件について触れたいと思います。
※個人のメモなので、完全に正確とはいえません
・ティム・エッチェルス/SKIN/刺青
→タイトルから取られた文字により構成され直線に並べられた「SKIN SINK INK KIN SIN IN」という6つの単語を、自らの皮膚に刺青として彫る責任を負う作品
落札
交換:ベトナム詩人の詩集
・真鍋大度 + 京都大学 神谷之康研究室/dissonant imaginary – bird/インクジェットプリント、額装
→2作品?あったようなのですが、うまく理解できませんでした……
落札(1作品目)
お金:1,111円+理解
目の見えない方が落札されていました
・岡﨑乾二郎/A: 壁画制作引換証
→岡崎さんは、本人は会場に来ておらず、ネット通信でメッセージのスタンプでやりとりし、落札するものを決めるというやり方に。この作品は、作家が、指定された場所に壁画を制作するもの(細かい制作時間など条件あり)
落札
機会:京都の築90年の民泊、壁画を見てもらえる
・岡﨑乾二郎/B: 制作ノート引換証
→今度は、制作ノート引換証で、購入決定から1日2ページずつ記入し、2ヶ月で仕上げる。おもしろいのが、作品受け渡し後20年間第三者に公開してはいけないこと。
ただ、この作品に影響をうけた自分の作品を発表するのは良い。
これは、この日の中で一番熱意のある落札者が揃っていた感じで、岡崎さんも悩んでいるようでした(悩み顏のスタンプ笑?)
落札
制作ノートを使用した作品小説を書き、20年後に公開する
(会場に来ていたのは、小説家の代理の人)
・BCL/Ghost in the Cell/Heartbeat/拍動する心筋細胞のビデオループ
→「「初音ミク」のしたい的特徴を記したDNAデータを作成し、iPS細胞から人工的に作り出した心筋細胞に組み込んで」おり、「初音ミクの心拍のひとつを取り出した映像であり、『Ghost in the Cell』を構成する最も極小な単位』」(カタログより)
落札(1作品目)
お金:10万+機会:表参道のコミュニティサロンで展示
作家の方は、落札者を決めたけれども落札を申し出た全員と、
改めて話たいと言っていました。
・BCL/©︎HeLa/実験への参加権とアーカイバルプリント
→「HeLa細胞が初めて写真を撮る場に独占的に立ち会い、撮影されたモノクロのアーカイバル・プリント」(カタログより)を手に入れる権利。
落札(2作品目)
お金:10万+機会:コンサル(弁護士の人)
・チェルフィッチュ/A Man on the Door/ドアにシングルチャンネルプロジェクション
→ドアの形の映像作品。一人の男が、ドアの向こう側について話をしている様子です。
落札
パス(断った)
某アートセンターでの展示や、自宅のドアに投影して展示したい……などなど、
バラエティー豊かな提案がありましたが、代表として来られていた岡田さんは、
パスを申し出ました。
所 感
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「機会」などを発表(その場で通訳も)することもあり、予定の19時〜21時より30分以上のびてしまっていました。
やはりまだまだ試験段階なのかな……という感じも。
単純に作家がかわいそうな時がありました。
岡崎さんの制作ノートの作品のように、作品の情報が事前にわかりやすいもので、目当てにしている人が複数訪れているのだったらまだ形になるのですが。
ある作品で、
「他に落札してる人がいないから、いけるかなと思って」
と安価で落札する失礼な観客もいました。
誰でも参加できるのは、利点ではありますが、
こういう方も来る可能性がありますね。
それも含めて、アートが社会にとってどういう存在がわかるのかもしれません。
ただ今回はどうしても、「安く買える」みたいな雰囲気や、会場を笑わせようみたいな雰囲気が、全体に漂っていた気はします。
チェルフィッチュの岡田さんが、「パス」と言ったのは、
作家のプライドというか、この雰囲気に流され妥協して落札することはしないという意思が感じられて、胸にくるものがありました。
オークション終了後に、別会場で「ディスカッション」の時間もあったので、この辺りのことを話し合ったのかな?と思います(私は、気力がなく不参加)。
それにしても、岡崎さんの作品落札者さんの小説とても楽しみ(20年後……)
注1:真鍋大度 + 京都大学 神谷之康研究室は、2作品出品していたので、実際には8作品
参考資料
・「ポスト資本主義オークション」展示カタログ
・TPAM「ポスト資本主義オークション」WEBページ
https://www.tpam.or.jp/program/2019/?program=post-capitalistic-auction
(2019/3/16閲覧)